VOL.6 杜山しえみ役・花澤香菜 & 神木出雲役・喜多村英梨
オフィシャルインタビュー
TEXT=鈴木 杏(ツヅリア)
香菜ちゃんは“リアルしえみ”。隣にいてくれて心強かったです
――はじめに今年1月より放送された『島根啓明結社篇』のお話から伺えればと思います。出雲が中心となったストーリーでしたが、おふたりは率直にどんなお気持ちでしたか?
出雲としてはお当番回ということで、やはりどの話数も非常に重たかったなという印象です。これまではしえみ含め、みんなに対してツンデレというよりも、ツンの成分がずっと強くて。多少デレたとしても腹の内は見せないまま、ここまでやってきていました。そんななか、この『島根啓明結社篇』は、出雲の本心や感情の起伏が一番露わになり、今まで見せてこなかった表情もたくさん出てくるエピソードになっていて。原作の加藤和恵先生はこんなふうに描きたかったんじゃないかな?と想像しながら、私もアフレコに挑んでいました。
英梨ちゃんが演じる出雲ちゃん、本当に良かったです。原作を読みながら「このシーンを演じるのは相当大変だろうな……」と想像はしていて。しえみちゃんとしても私としても、サポートというサポートはできなかったけれど……。
いや、すごく見守ってくれてたのを感じたよ。
しえみちゃんと一緒に見守って、応援しながら、私もお芝居していましたね。
ひとりで戦っていたわけではないので、声も音楽も演出もすべてが合わさったものがオンエアされたときに、自分がやってきたことがひとつの形になってみなさんにお届けできた、達成感みたいなものがありました。それに自分でも毎話放送を追いながら、一人相撲になっていないなと確認できたというか。出雲としてはほぼ一人相撲して、天邪鬼で空回って……というところではありましたが、現場で演じる者としてはお当番回ではあるものの、チームの一員として、みんなのパズルがちゃんと合わさったうえで、『島根啓明結社篇』が作れているのを改めて実感していました。
――特に印象に残っているシーンを挙げるなら?
いっぱいありますけど、このふたりのシーンとしては、やっぱり第10話の病室で泣きじゃくるシーンです。原作を読んで想像していた以上に、お芝居を通して会話ができたところでした。声優の力が存分に活かされているという意味でも、アニメならではの魅力がお見せできていたら良いなと思っています。裏話をすると、テストはすべて掛け合いをしつつ、本番では技術的な事情から抜きで録ったセリフもあるんです。それでも「香菜ちゃんはこんなしえみをやってくるんだろうな」と、家で練習中にしていた想像だけじゃなくて、一度、生のしえみを感じてから、本番に臨めたのは大きかったなと。本当に感動しっぱなしで、ずっと鼻をかんでいました(笑)。
あそこに行くまでに、すでに英梨ちゃんズビズビになっていたんです(笑)。
そうそう。どうせ化粧も剥げちゃうと思ったから、あの回はすっぴんで現場に行きました(笑)。
ブースの中に箱ティッシュも置いてね。
「ごめん、今日は荷物いっぱい広げるから!」ってね? でも香菜ちゃんは隣で「いーよいーよ!」と言ってくれて、心強かったです。本当にリアルしえみだなって思います。たくましいんですよね。
たくましい(笑)。
香菜ちゃんには、心強いという意味でのたくましさを感じるんです。きっとすごく感動してくれているんだろうというのも感じつつ、私がバタついているところでも「そのままでいいんだよ。英梨ちゃんの好きにしていいんだよ!」と自由を与えてくれる頼もしさがありました。リテイクに付き合わせてしまっているという部分では、迷惑をかけたくない気持ちもありましたが、自分としても良いテイクが取りたいという気持ちが強かったですし、香菜ちゃんとは同期同士、引き出しの出し合いっこというところもあったので、ふたりの掛け合いでどんな良いお芝居ができるだろう?という好奇心もあって。そういう意味で緊張はしましたけど、すごくやりやすくて、一緒に録れたことが本当にありがたかったです。やっぱり声優のお仕事として、生で掛け合い、繊細な部分まで擦り合わせるのはとても大事なことだなと、このシリーズで特に感じました。
そうだね。一緒にやれて本当に良かったです。
――ディレクション側とはどんなやり取りがありましたか?
吉田大輔監督からは、やっていくうちに「こういうバージョンも見たいです」「こういうバージョンだったらどうなるでしょう?」と出てきていたよね。
欲しがりなんですよ、監督が!(笑) しえみも同じようなことがあったもんね。受け答えの単純な息台詞でも、かなりニュアンスにこだわっていらっしゃったりして。繊細なお芝居が求められる現場でしたし、特にこのシーンではそれを感じました。監督たちも演出面で見せたいものをお持ちだし、こちらもお芝居として見せたいものがあるから、その擦り合わせの作業が特に多かったシーンのひとつです。リクエストを重ね合って、いろんなテイクを取ってみて。喉を酷使するという点でも大変でしたが、何度もスイッチを入れなければいけないぶん、肉体面や技術面以上に、精神面でハイカロリーなシーンではありましたね。
確かに、そこまで気持ちを持っていかなきゃいけないもんね。私はそんな英梨ちゃんが隣にいてくれたから、すんなりどばー!っとなっていました。とにかく『島根啓明結社篇』は、みんなが出雲ちゃんを助けようと、気持ちが乗っているのが伝わってきて良いなと思いました。
そう考えるとある意味、『島根啓明結社篇』が一番青春していたよね! この年代のらしさ、泥臭さ、青さ、未熟さが入り混じっていて。それにみんなちゃんとお互いのことを気にし合っていて、良い子たちが揃っているなと感じるし。決して辛いだけではない、加藤先生が作られてきた原作の力、キャラクターの魅力に支えられたエピソードでした。でもそんな“俺たちの青春!”も、すぐに終わってしまったけど……。
雪ちゃんが大変なことになっちゃうからね……!
しえみ&出雲お泊まり女子会は、兼ね役にも注目!
――『雪ノ果篇』に話を移すと、まさに第2話ではしえみが燐に告白される青春シーンがありました。
そうなんですよ〜!
ひゅーひゅー!
私も好き!って、そういう好きだったの!?っていう(笑)。
ライクとラブがね。
しえみちゃんは自分に恋愛はまだ早いと思っていて、真剣に向き合ってこなかったんですよね。だから心の準備ができていないまま、燐から告白されて。燐も雪ちゃんもふたりとも大好きだけど……って。このシーンを見ながら、こういう感覚って、私はいつ頃持つようになったかな……?と自分を振り返ったりもしてしまいました。そのくらい、しえみちゃんは本当に混じり気のない純粋な子なので、そんな彼女を演じることに対して、若干の気負いもありました。
――しえみはみんなと同い年ではありますが、「自分はまだ子供」と考えているところに、人と交流しないで育ってきた生い立ちを感じるというか。
そうですね。大事に育てられてきたというのもありますし。それこそ戦いではニーちゃんとコンビネーションを見せて活躍できていたと思うんですけど、しえみちゃんとしては「ニーちゃんありがとう」とか「みんなありがとう」という考えに行ってしまって、自分に自信があるかというとそうではないんだろうな……と思います。
第6話で燐としえみのやりとりに出雲が出くわすところは、まさに他人事なのもあって、野次馬根性からめっちゃ面白いなー!と見ていました(笑)。
「恋愛の好きと友達の好きはどう違うの?」としえみに聞かれたときの、燐の説明も良くなかったよね?
うん、品はなかったかもしれないね(笑)。あと、こと恋愛に関しては、朴の経験値が高すぎて! 漫画でしか知識を得ておらず、わりとキャイキャイしている出雲が、朴から「出雲ちゃん いいトコだから シッ」と叱られていましたけど(笑)。でも個人的にはあれも『島根啓明結社篇』を経て、みんなとの距離が近くなったり、自分の感情を表に出すのがラフになっていたりするからこそのやり取りだなと。ある種「遅れてやってきた私の青春!」という出雲を演じられている感覚がありました。そういう意味でも、すごく楽しかったシーンです(笑)。
あはは! でも確かに、『島根啓明結社篇』を経てこそだよね。
いまだに「杜山しえみ」とフルネーム呼びなところは、天邪鬼感があって可愛いんだけどね。いつか「しえみ」って呼んであげなね!と思っています。それでもけっこう「奥村燐!」とか、出雲が相手の名前を呼ぶことが増えていて、これも『島根啓明結社篇』で得た大事なステップアップかなとじんわり思っていました。
――その後第6話では、出雲が“勉強会”と称して、しえみの家にお泊まりに行きました。出雲も恋愛経験がないなかで、指導者側に立っているのが彼女らしいというか。
指導してくれてたね。
しえみがアドバイスを素直に聞いてくれるから。あの女子会も、青春してたよね。
出雲ちゃんがうちに来るとなって、ファンなのか?ってくらい、しえみちゃんは喜んでいて。
「ぎゃあああ――ッ!!」」とは書いてあったけど、とんでもないリアクションのアドリブをしてくれるんだもん(笑)。
ほんと??ほんと!!!?みたいな。しえみちゃんは、本当に出雲ちゃんのことを尊敬しているんだと思うんです。たくさん彼女のことを見てきたなかで、いきなりこんなに心の距離が縮まったことに、多分びっくりしちゃっているんだと思います。
確かに。ちょっとこそばゆいけど、良いシーンですよね。
――一方出雲も、しえみの部屋に心掴まれていました。
だからどっちもむっつりというか(笑)。喜びを分かち合わないところが、まだ恥ずかしがり屋なふたりという感じなんですけど。視聴者さんからすれば、ふたりの距離が明らかに近づいていて、ほっこりしてもらえるシーンだと思うので、そこを具現化できて嬉しかったです。もうひとつ裏話なのですが、出雲が貸してあげた『君物語!』の君ちゃんと颯人くんは、なぜか我々が兼ね役しています。あれも面白かったよね(笑)。
面白かった! 英梨ちゃんが颯人くん役で。
若さん(若林和弘音響監督)から何か細かいディレクションがあるのかな?と待っていたんですけど、テストがスッと終わって。
「じゃあ本番やってみようか」って始まったんだよね。
そうそう。クレジットには載っていないので、このインタビュー記事を読んで気付いてもらえたら嬉しいです。私なりに精一杯の青春イケメンを演じてみました。
イケメンだったよ!
告白を断られても、燐はカッコよかったです
――その後同じく第6話では、しえみが燐の告白をお断りしました。
胸が痛かったですね……。ただやっぱり「じゃあお付き合いをしてみましょうか」と、しえみちゃんが軽はずみな行動を取れるタイプではないのも分かるので。彼女にとっては最善策だったのかなと思います。
しえみも燐も純粋無垢で一生懸命で、相手と真剣に向き合う真面目さが、こそばゆくもあり人間性が良いなと改めて思いました。告白されて混乱はしていたけれど、なんとか自分の答えを見出そうと悩む姿からも、決して自分本位ではなく、相手である燐のことを思っているのが感じ取れます。断る場面の収録も、面白かったです。まず入りの挨拶に「人一倍元気で!」とディレクションがあり、そこも「テストみたいに声裏返せるかな?」とか、細かなこだわりが入っていたよね。そういう素っ頓狂さも、見ている側が微笑ましくなってしまう、しえみの無垢さの表れで。燐にとっては告白成功とはならなかったけれど、しえみの答えには希望が見出せるじゃないですか。彼女が未来を見据えて出した決断であり、幼いなりにもしっかりと成長しようとしている、生きることへの真剣さがあって、そういうところがしえみの良さなんだなと改めて感じたシーンでした。
確かに。しえみちゃんは駆け引きしないもんね。これがもし少女漫画だったらね?
モノローグで駆け引きしまくってるよね!?
その点、しえみちゃんは全部口で説明しているから。
潔くて素晴らしいです。
告白を断られた燐も、カッコよかったです。この年代の子だったら、「いや、最初から好きとか思ってねーし! 本気にしたの!?」とか言っちゃいそうじゃないですか。
「なしなしなーし!」ってね。純粋に良い子だよね。
本当にまっすぐで。
主人公だよね。
ただそういうところに、雪ちゃんがじめじめしちゃうんだよね……。
そうなんだよねー! 燐は無自覚で輝いている人だから。
――ちなみに第3話では、燐が雪男と温泉に浸かりながら、しえみに告白したことを話しています。
男子もそういう話するんだ?っていうところなのかな? でも雪男に何でも話してほしいというのがベースにある燐だから、自分のことも全開にできているのかも。
燐だからというのはあるのかもしれないね。でも、私も弟と恋バナしていたけどな。
――男性キャストの方々は、みなさん兄弟間でこういった話はしないということでした。
へえー! 小っ恥ずかしいのかな?
そっか! うちの場合は、男女だったからなのかも。
しかも奥村兄弟に関しては、絡む女の子が同じしえみだしね。燐も、雪ちゃんがしえみを好きだと思っていたから、打ち明けたところもあるだろうし。
筋を通しておこうってね。
そうなると、燐の性格ゆえなのかもしれませんね。そこが彼の良さでもあり、もどかしい部分でもあるという。
もうさ、こんなの絶対次の日には、クラス中に広まってるタイプだよね?
そうだね。多分志摩さんが広げてるんだろうな(笑)。個人的にあの旅館のシーンは、どっちかというと宿の女将さんが、ずっとふたりの仲を勘違いしていたのがハイライトでしたね。雪ちゃんが全力で「違うんです!」と否定しているのが、また良い味を出していました。
面白いよね(笑)。
出雲に見える、しえみへの“片想い感”
――『雪ノ果篇』では祓魔師認定試験が前倒しになることで、塾生たちがそれぞれ自分の進む道を決め始めます。出雲は第1話で、勝呂に「あたしは祓魔師になるわ。他に行くとこもないし、なんにもなくなっちゃったから逆に清々しいくらいよ」と語っていました。
すごく大人になったな!と、彼女の成長が見えるシーンでした。勝呂に対しても出雲なりの言葉で励ましてあげているというか、ちゃんと相手を想い、向き合って会話できていましたし。自虐していた彼女から一皮も二皮も剥けて、あそこはイケメンな出雲でしたね。自分としても『島根啓明結社篇』でお母さんのお墓に向かって、もう前を向くと宣言した出雲をしっかり出したいと考えながら、お芝居をした記憶です。勝呂との関係性も、犬猿の仲かと思いきやという。それも出雲の危機にみんながちゃんと駆け付けてくれ、「あいつらが好きだったんだ」と自覚し、彼女のなかで仲間意識が1段も2段もアップしたところで、やはり成長を感じます。
――しえみは第2話で、母から「本当に将来祓魔師になりたいのかい?」と問われているなか、第6話では出雲がそんな彼女を後押しする話をしえみの母にしていました。
この先しえみちゃんがお母さんと話をするシーンが出てくるのですが、そこはめちゃくちゃ勇気を振り絞っているのが伝わってきました。ただもちろん、娘のことが大事だし、危険な仕事だし、普通に落ち着いてほしいという、お母さんの気持ちも分かりますし。
出雲としては、これまで一緒に過ごしてきたからこそ、もちろんお母さんも分かっているとは思いますけど、あの子はちゃんとスゴい人間なんです!という本音がつい出てきてしまった……という、素敵なシーンでした。ちょっとアツくなってしまって、ハッと我に返り、じゃあ失礼しますとそそくさ行ってしまうのが、また出雲らしいなと。ある種、しえみに若干の片想い感があって、私はすごく好きなんです。恋愛とかじゃなくて、陰ながら実はこう思っている、実は出雲はしえみを認めているんだというのが顕著で、すごく良かったです。お母さん相手だから言葉は選びつつですが、子供なりに精一杯伝えようとしているところも、甲斐甲斐しいというか。出雲としては、絶対しえみには見られたくないシーンだと思うけど!(笑)
お母さんの立場からすると、すごく嬉しいだろうなと思いました。こんなに素敵なお友達ができて、しかも娘の活躍をちゃんと認めてくれている人がいるんだと感じられるのは、幸せなことだなと思います。
志摩が完全にイルミナティにはならないと、信じているんだと思う
――『雪ノ果篇』での奥村兄弟については、改めていかがでしょう?
雪ちゃんが追い詰められてるねー!という感じですね。というか、自分で自分を追い詰めていってしまっているんですけど。
本当にそうなの! 事あるごとに雪ちゃんの目が死んでいる描写が入ってくるんです。これ以上は行っちゃダメ!と思うし、燐も止めようとしているし、しえみも気付いて止めようとはしているんですけど……。
それなのに雪ちゃん自身が、頑なに拒否しちゃっているので。これまでは笑って誤魔化すタイプだったけど、グッと唇を噛み締めるシーンが増えていっている気がします。そういう感情がコントロールできていない描写が、痛々しくてね……。どうにかしてあげたいけれど、本人が助けてほしいと思っていなければ、助けることはできないという、一方通行な状態がしばらく続いていくので。収録現場は「はあー、雪ちゃん……」という感じでしたが、演じる福山(潤)さんは楽しそうでした(笑)。苦難になればなるほど燃える方なので、いろんな引き出しを見させていただき、勉強になります。怒鳴るシーンなんかも、蓋を開けてみると沸点のトップが同じところなんかは、やっぱり燐と雪男って兄弟なんだなと感じたり。『君物語!』の君ちゃんじゃないんですけど、「違うんだよ〜! 燐〜、気付いてよ〜!!」と思うところもあったり。
兄弟の会話で悲しいシーンが出てくるんですよね。今までならもう少しぶつかれていたはずなのに、それすら止めて、自分のなかで納得して進んで行ってしまうところを見ると、もう取り返しが付かないんだな……と感じてしまい、すごく怖くなりました。
――一番近いはずの燐の言葉が届かない。
そうなんですよね……。
しかもそこを、絶妙なタイミングでつついてくる志摩さんね。修業も見てましたよー?と、ちょいちょい“ウェルカム・イルミナティ”してくるから。そこでなんとかブレないようにいようとしている雪ちゃんが、逆に見ていて辛いというか。メフィストにも薄々バレているだろうし。『島根啓明結社篇』とは違って、疑念が確信に変わっていて、環境面でも追い込まれているから、どんどんバッドエンドルートに突き進んでいっていると思うんだよね。
――一方志摩は、二重スパイとして引き続き活躍を見せています。
志摩という人間を、みんななりに理解して、みんななりの受け止め方をしているなと感じます。『島根啓明結社篇』終盤で一旦はライトニングに嘘をついて庇ったり、でも勝呂なんかはその後「信じられるわけない」と言ったりもしていましたが、口には出さずともやっぱりみんな志摩を大切な仲間だと思っていて、彼が決めた道も受け止めて接しているのが窺えます。
みんな好意的だよね。
そうね。出雲としては「あんたはそういう人間よね。それも含めてあんただもんね」と解釈したんだろうなと感じました。「でも絶対許さないけどな!」という気持ちもあるし、それでも今までどおりの仲を保つのは、どこかで彼を信じているからこそできることじゃないかなと演じていて思ったんです。きっとみんな、完全にイルミナティ寄りにはならないと、信じているんじゃないでしょうか。半々な立場にいるのが志摩さんらしいし、そうでないと危ういというのもみんな懸念しているところでしょうし、志摩さんのためを想っての最善の対応を取っていて、そこに優しさや友情を感じます。今後出雲と志摩さんの会話も出てくるので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。監督から「ちょっと距離が縮まったのが、観ている人に伝わるような絶妙な感じで!」とディレクションをいただきつつ、遊佐(浩二)さんとキャッチボールできたと思います。
――しえみとしては、第6話でアマイモンとの再会もありました。
嫌だった〜! 乱暴なんだもん、あの人! 忘れた頃にやってきて(笑)。
突然やってきて「ジャマだ」とか言ってくるもんね(笑)。
そうなの。ただ「もうあの時とは違う!!」「私の友達に近付かないで…!!」と、今の自分は逃げずにみんなを守れるんだと立ち向かうしえみちゃんは、見ていてグッときました。
アマイモンも、「む、こいつやりよる……!」みたいなリアクションだったもんね。
収録現場で注目の的!? 関智一さんの不思議なTシャツ
――そのほかに印象に残っているキャラクターを挙げるなら?
私、ライトニングが大好きなんです。
ライトニングは狂気さも垣間見せるキャラクターだから、一筋縄ではいかない魅力を感じます。何より、関さんの技術も含めて、完成されているキャラクターだよね。
そうなの。あの飄々とした感じのなかに、本当に言いたいことはこれだったんだな!というのがそっと出てきて、しかもそれがちゃんと分かるのが、すごく素敵だなと思いながら見ていました。話数によっては台本を捲れど捲れど関さんのセリフだったし、説明役も全部こなしてくれるので、そういう部分でもスゴいなと!
『雪ノ果篇』はずっと長台詞だし、でもそれをさっとやってのけてしまう方なので。ミョウガTシャツを着ながらね?
不思議なTシャツを着ていらっしゃるんです(笑)。
山菜の柄が入ったTシャツを愛用されているらしくて。ミョウガのときは、私は遠目だったのでたけのこかな?と思ったんですけど。誰かは「チューリップだよね?」と言っていました。でも先輩のTシャツを、そんな覗き込めないじゃないですか?
私は隣にいたから、絶対にミョウガだわ……!と思ったの(笑)。それで関さんに「ミョウガですか?」と聞いたんです。
それでついに「ミョウガだよ」って明かされたんだよね(笑)。そういう場を軽くしてくれる空気感や、掴みどころのない面白さ、優しさ、でもお芝居となると締めるところはしっかり締めてくださるところも、ライトニングに通ずるものを感じて、いつも勉強させていただいています。私はというと、個人的に原作の『青森篇』が好きで。シュラさん自体も好きですし、テーマは違えど出雲と少しジャンルが似ているなと感じるんです。ふたりとも「自分の運命はどうせこうだから、こうやって生きていくんだ」と、最初は諦めているんですよ。そうやって偽りの自分で生きてきたシュラさんが、「生きたい」と本音を爆発させる姿は、先に『島根啓明結社篇』を体験している身としては、そうそうそれで良いんだよ、もっと素直に自分の人生を歩んで良いんだよ!と、どこか出雲と重なって応援したくなりました。シュラはシュラで、ライトニングとはまた違う飄々としたところがあるぶん、本心をしっかりと見せるエピソードがあまりなかったと思うので、『青森篇』でさらに彼女の魅力が増したなと感じます。
――シュラを演じる佐藤利奈さんの姿は、収録現場でご覧になっていかがでしたか?
多分本人はシュラと真逆というか。
芯の強さはあるけど、ほんにゃかしているよね?
ほんにゃかしているね。そんなさとりなから、あの強いシュラのお芝居が出てくるんだから、本当にプロだなと思います。
本当だよね。口の悪い利奈さん、見たことないもん!
そうなの! さとりなは品があるし、基本的に落ち着いていらっしゃる方なので。だからこそシュラの分析力が光るシーンは説得力が増しますし、さとりなの技術のおかげで情熱的なモノローグもすごく心に響きます。シュラ役がキャスティングされた当時は、個人的には意外だったんですよ。
確かに。眼鏡をかけた先生役とか、お淑やかな役の印象だった。
そういう理詰め系のキャラのイメージはあったんですけど、共演などを通して抱いていた本人の印象とシュラのキャラクター像が、全然違ったので。ただもちろんさとりななら何でもこなせるのは間違いないし、どんなシュラになるんだろう!とワクワクしたのを覚えています。だから今回のお当番回もすごく楽しみで、結果抜群の安定感のなか、物語をしっかり形にされていました。
13年を経て、今は家族のような『青エク』現場
――13年前に放送されたアニメ第1作目から、おふたりは『青エク』でも長く共演されてきました。先ほど声優としては同期というお話もありましたが、改めて作品開始当時を振り返った思い出を聞かせてください。
13年って、小学校卒業しちゃうね! ジュン・フクヤマはずっと変わらず『青エク』現場を沸かし続けてくれているよね?
そうだね、ずっとダジャレを言い続けています(笑)。
ずっと面白いお兄さんです!(笑) それに「本番行きます!」と声が掛かって、「はーい、お願いしまーす!!」と返す彼の大きな掛け声が、『青エク』の現場を引き締めてくれているのも感じます。
思い返すと、最初の頃の現場はもう少しピリッとしていなかった? 今は「みんな本当によくここまで頑張ってきたね!」みたいな感じだけど。
全員の距離が縮まって、もう家族みたいになってるもんね。
それに最初の頃は、ゲストでいらっしゃるキャストさんがレジェンドの方ばかりで、いつも緊張していて。だから英梨ちゃんがいてくれて、本当に良かったっていつも思ってたの。
いやいや、私は香菜ちゃんがスーパースターすぎて、自分もなんとかここで踏ん張っていかなきゃ……!って、一人で相撲を取っていたから! そのなかでも福山さんは笑わせてくれる人だったけど。でも確かに、今ほど砕けた空気ではなかったかもね?
だって中井和哉さんに、今みたいに話しかけられなかったもん!
確かに! 当時私たちが中井さんをイジったことはなかったと思う(笑)。中井さんや遊佐さんといった先輩方もいらっしゃり、粗相をしてはいけないという不安ももちろんありました。実は私は、遊佐さんのいちファンでして。
大好きなんだよね?(笑) しかも関西弁キャラで!
裏切る役を演じる遊佐さんは、もうドンピシャで大好きなの! 元々原作を読んでいるときも遊佐さんの声で読んでいて、志摩のキャストが遊佐さんに決まったときも、自分も共演できるとなったときも嬉しかったし、でもご迷惑をお掛けしたりはしたくないから、ずーっと陰キャファンみたいな感じでした(笑)。
(笑)。いやでも、ちゃんと伝えていたような気はするけどね?
伝えてたっていうか、漏れ出ちゃってたと思う(笑)。そんな感じで『青エク』はレジェンドも先輩方も、めちゃめちゃ活躍している香菜ちゃんという同期も一緒という現場で、自分がかっ消えないよう、芝居も役者としての在り方も模索していたというか。埋もれないように、足を引っ張らないように……と、当初は陰鬱な感じだった気がします。だから出雲には少し、シンパシーを感じていたところがあるのかも。今思うと、それが良かったのかもしれません。
――最後にファンの皆様へメッセージをお願いします!
観てくださっているみなさんは、すでに雪ちゃんが心配でたまらないと思うのですが、これからもっとその心配が募っていくと思います。ただ祓魔塾のみんなも、そんな雪ちゃんを見てどうしようと悩みぶつかっていくので、その様子を見守っていただきたいです。しえみちゃんにもここから先、試練が待っていて大変ではありますが、演じる身としてはそれも楽しみにしています。引き続き、応援よろしくお願いいたします。
出雲としては『島根啓明結社篇』を経てひとつ腹を括りつつ、新たなストーリーをみんなと紡げる喜びと、一皮剥けた出雲ちゃんが見る世界があり、彼女のことがどんどん愛らしく感じられると思います。祓魔師認定試験が早まるのをきっかけに、一人ひとりが成長しようと前を向いていくなかで、相変わらず重たいお話もありつつも、彼女たちの友情にほっこりさせられるシーンも今後出てきますので、どうぞお楽しみに。また役者としてはその先の『終夜篇』含め、とにかくスゴいキャスト陣が思う存分実力を発揮し、アニメならではの良さを爆発させていきます。原作のパワーがスゴいのはもちろんのこと、アニメはアニメで奥行きある作品が作れていると自負しながらみんなで制作に臨んでいますので、原作ファンの方含め、アニメも目一杯楽しんでいただけたら幸いです!